なぜオトコはハダカになるのか? | monoblog

赤い鳥たち

先日、旧知な沖縄のクライアントと、デザインの打ち合わせの時に、クライアントの方から問われました。とある場所に、今までよりも多くの人が集まるようになり、そこにあるビーチも盛況になってきた。ただ、近隣には昔からそこに住む人たちもいる。ビーチの近くには公衆トイレがある。設置場所はビーチを出て通りを渡った向こう側の、集落があるエリア。道をまたいで、上半身ハダカの男性がトイレに入る。用を足した後、集落があることに気づき、そのまま散歩したりする。

住んでいる人からすると「家の前を、知らない男がハダカで歩いている」ということになる。もし自分事にしてみたらどうだろう。

週末の朝遅く起きて、何か食べ物でも買おうかとコンビニへ向かおうと家の扉を開けたら、通路に上半身ハダカの見知らぬ人が歩いていた。完全にヤバい人認定だ。だいたいの人は驚くだろう。ひょっとしたら通報するかもしれない。

住んでいる場所が、ある日「観光地」になっている。来る人(観光)と住む人(生活)の差。そこに接点がみつかればいいのだけれど。

ビーチの近くだけでなく、世界遺産の城跡でも上半身ハダカになる男の人がいるらしい。何故、そんなところでハダカになるの? というハナシから、その場にいた男性代表(つーか自分のみ男)として、クライアントから「なんでオトコの人はすぐにハダカになるんですか?」と問われました。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で

映画館に観に行ったらもらえたポスター。

少し前に観た映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という映画のなかで、ブラット・ピット演じるスタントマンがレオナルド・ディカプリオにテレビの映りが悪いからアンテナ修理を頼まれるシーンがあった。屋根に登ったブラピは、おもむろに着ていたGジャンとTシャツを脱いで、上半身ハダカになってアンテナの修理を始める。修理することに上着を脱ぐ必然性は全く無かったんだけど、50過ぎているブラピは鍛えられた肉体をしていた。つまり、鍛えられた肉体を持つ男は、時に無意味にハダカになる。ということではなかろうか。

とはいっても

自分は脱ぎませんけども。。。と話しあってるうちに、いくつか想定できる理由が見えてきた。

1.暑いから

2.日焼けしたいから

3.見せたい(魅せたい)から

4.脱ぎたいから

1.の暑いは、暑いから。でも、脱いで良い場所かどうかの判断がされてない。

2.は沖縄の日差しで日焼けして、帰りたいのでしょう。きっと。

3.肉体美。日頃から鍛えてる成果をみんなに魅せたい。ブラピ。

4.沖縄=「青い海」というイメージが脳内を占拠して、ビーチでなくても青い海に自分がいる、という錯覚を起こさせるのではないか

こんな感じの理由がいくつか混ざって、脱いでしまうのではないでしょうか。アレコレ言ってるうちに、彼女の口から「オーバーツーリズム」という言葉が出てきた。

オーバーツーリズムとは

観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せてしまう状態のことらしい。過剰な混雑。これには心当たりがある。

とある離島へ取材へ行ったとき。出来たばかりの大きい橋を渡った際に、橋の一番見栄えのいい場所の両サイドに路上駐車するクルマが多くて、ちょっと事故るくらいのスペースの狭さだった。

やんばるの並木で有名なスポット。その近くにある無料の駐車場はスペースが狭いなかに密集して車が止まっていた。パッと見で、出し入れの時に高い確率で事故りそうなくらいキッチキチに停まってる。実際、その時駐車を試みてるクルマが、切り返しで絶体絶命な感じになってた。怖くて止められない。

同じく、やんばるにある車でいける人気の離島。移住当初に行ったら無人の美しいビーチがあって魅了された思い出がある。久々に行ってみると、いろんな店が出来ていて全く違う島になっていた。島の高台から見下ろしていたら、駐車場で丸裸で着替えている男性がいた。車に隠れているつもりの様子だったが、反対側にいたコチラには全く気づいていなかった。

こういった問題の解決策で、たとえば「入島税」などがあるらしい。島や観光地に入る料金。バルセロナなど「オーバーツーリズム先進国」では導入されているらしいけど、逆に「金払ってるからオレなんでもできる」、無双になっちゃう人もいるらしく、金は落ちても客の品行は上がらない。

「なんにもない場所」が観光地に

なんにもない場所、というキャッチコピーを聞いたことがある。どこの地域にも、そこに住む人たちにとって思い入れのある場所があって、そこに根付くストーリーを聞いたら、異邦人でも思い入れが共有できるということになる。つまり、地域の思いが「観光」に繋がっていく。どこにでもある「なんにもない所」を観光地にする魔法の言葉のようだ。それを言えばそこも観光地になる。

という話しなのかもしれないけれど、観光客としては「お客」として扱ってもらうのが「当たり前」という前提で来ていたりする。さてさて迎え入れる準備が地域の人たちがととのえているのかどうか。そもそも観光地として考えていない住民だって少なくないはず。これは、ウチのギャラリーでも多少問題になってることがある。

工芸の展示販売のギャラリーなのですが

私たちが運営している工芸ギャラリー「Galleryはらいそ」は、基本的に食事の提供をしないのでトイレは開放していない。ただ、たまに購入後「トイレ借りれます?」というお客様がいる。開放はしていないけど、もちろんお貸しする。ただ、購入前のお客様に聞かれるとちょっと悩む。トイレを貸して、用を足した後に買う人もいれば、買わない人もいる。こちらは基本、トイレを開放はしていない。

トイレを借りて買わなかった人は、お客様?

もちろん「買わなければならない」というルールもない。飲食店は、店に来るお客様は基本的に食事をするけど、工芸ギャラリーは見るだけで帰る方も少なくない。それは全く問題ない。そこに自分の欲しいモノがなければ買わなければいいと思う。ただ、ギャラリーとしては、トイレを開放していない。そこで「用を足したい」という思いはお客様の扱いとして対応して、買わないで帰るのは「ギャラリーは見るだけでも良い」という都合。

ここがいつもモヤ〜っとしている。

例えば、小さいお子さんを連れてるお客様。子どもがトイレに行きたい、というのは我慢が出来ないこともわかるので、それは対応する。妊婦のお客様なども来るので、そういう方に求められたら、やはり対応する。

「今日は見るだけ」で来たお客様も勿論いる。「また来るハズなのに、貸さない対応をするとリピーターが育たない」といった考えもある。ただ、リピーターの方でトイレを借りる方、あまりいないような気がする。

ギャラリーの駐車場に車を止めてから

ギャラリーの扉を開けて「ちょっとお腹空いててまず腹ごしらえしてからまた来ていいですか?」って言う方がいた。「いいですよ」と答えると、そのままギャラリーには入らずに扉を閉めてギャラリーの駐車場に止めたまま、近くの飲食店へ食事へ歩いて向かっていった。2時間後、その方はギャラリーに戻ってきて開口一番「うわー、友達から聞いてた素敵なモノが一杯ある感じの店だー!」と大きな声で言った。店内を見ながら「じっくり見たいけど、まずトイレ借りれます?」と言われ、トイレを案内した。しばらくして用を足した後、さきほどの大声とは別に気配を消したようにギャラリー内を回った後、静かな声で「ありがとうございましたー」と入ってきた扉から出て行った。

この人が現在のチャンピオン?です

この5年間で、この人が一番、スタッフをざわつかせたチャンピオンとして君臨している。駐車場とトイレを借りただけの人。さすがに「お客様」とは言わなくていいよね。。。ジブンゴトで考えたら、、、リピートできないかな。こういうことがあった後、スタッフは心が動揺します。ざわざわします。ただ、ある時から「徳を落としてった人」という考えが芽生えてきた。

トイレで徳を落としている

トイレだけ借りて帰られた方。その人が積み上げた徳をトイレに落としていってしまった。その徳はGalleryはらいその「トイレの神様」が拾って貯めているのではないか。トイレ案件が続くと、高額商品が急に売れたりする。ひょっとしたらトイレの神様が拾った徳が貯まったから還元されたのかな。などと考えていくと、多少こちらのざわつきも収まる気がしていた。

ならば、徳を落とした人はどうなるの?

トイレに貯まった徳が還元されたとき、「徳を落とした人」には何が起きるんだろう? 徳がマイナスされている人にどんな影響があるのだろうか。はらいそで還元されたプラスの徳の分、誰かが何かを代償として支払っていたら。それを考えてしまうと、ちょっと「呪い」のようになってしまうから、「トイレで徳を落とす」というのも物騒な話しだな、と思った。たずねられたら、アレコレ考えずにトイレは貸そうと思う。

人を変えるのは難しいから

結局、自分が変わろうかと思ってる。だから、海で上半身ハダカになっても、店に行くときは上に何かを着ようと心がける(前からそうしてますが)。沖縄は日差しが強いから来年からはラッシュガードを着ようかな。あと例えコンビニなど、トイレを開放している店で用を足したら、そこで何かしらお金を落とすようにする。ひょっとしたらそこにも「トイレの神様」がいるかもしれないから。そこで自分が徳を落としてたりしたら、何で還元されるかわかりませんからね。。。


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