言葉に踊らされる私 | monoblog

長女が中学生時代に、成績についてショボーンしてることがあって、励ましがわり「自分は中学の時、美術が1だった」と言ったところ『デザイナーなのに美術が1』にめちゃくちゃ驚いていた。そして元気になった。娘が学校の成績でしょんぼりしていたクラスメイトに「ウチの父ちゃん、デザイナーなのに中学で美術1だったって」と伝えてみると、たちどころにモチベーションが回復し、しかも爆笑という名の笑顔まで取り戻すという、スベリ知らずの魔法の言葉となったようです。それを聞いたとき、良かったな、嬉しいニュースだ、と思いました。でも、みんなに言いふらすのは、本意じゃないぞ。スベリ知らずだったら仕方ないけども。

中学二年生時の美術は1でしたが、小学生の頃に習い事でやっていた習字では「字が踊っている」と言われ、専門学校時代の写真実習では「写真の水平が曲がってる。曲がってるのは根性が曲がってるからだ!」と罵られ、社会に出て、デザイナーになる必須条件は「字が綺麗な事」だと言われました。

 

そんなんですが、沖縄でデザイナーやってます

そんなんですが20年以上デザイナーやって、事務所立ち上げて今年で10年目となります。

 

知人から「MEC食」という食事法について聞きました。「肉(meat)と卵(egg)とチーズ(cheese)だけを食べる食事法」らしいです。なんだろうかと調べてみたら、割とエッジな健康法? でした。とりあえず試してみるかと最近、朝にチーズオムレツを作って食べています。その効果としては、、、オムレツの仕上がりがよくなってきました。因にMEC食の肝は「一口サイズで30回噛む」という『カムカム30回』ルールなんですが、ここは全く実践できてません。

焼き加減やカタチもさることながら「ケチャップのかけ方」もなかなか、容易にはいきません。「オムレツ道(MECとは別道)」は果てしないですね。

『好きを「仕事」にする』

好きな事をやって食べていける。そんな風に生きられたら素晴らしい。でも、好きな仕事方面に進んでみても「好きではない事」が出てきます。デザインや作業は好きでも、それだけやっていれば良いわけではありません。例えばお金について。正直、考えなくて良いなら考えたくはないです。けれどお金については、考えなくてはいけない最も重要な事だと感じます。金策、金額目標、見積、請求などなど、、、好きだけど、見なきゃいけない好きじゃない事も見てくと、だんだん好きとか嫌いとかじゃなくなってくる。それを差し置いて、「好きな事」だけを見て、やって、しかも上手くいってる人。あまり見かけたことがありません。好き・嫌いは別として、根本的に考えなければいけない部分をないがしろにしないのが、大人の社会なのではないか。などと思います。肉と卵とチーズも、一口サイズを30回以上カムカムしないと、「MEC食」とは言えないように。

元サッカー日本代表の言葉

一昨年あたりにネットで見かけた、元サッカー日本代表の今野敏幸選手のインタビューが印象に残ってます。確か当時の彼は35歳。「『キングカズ』までは難しいかもしれないけど、横浜マリノスの中澤さんみたいに、40歳までプレーしたい」とのことでした。そこで彼は、年長の現役選手を観察し、長くプレーする秘訣を分析してみたそうです。結果、見えてきたのは「みんな、年々上手くなっている」。「体力的には落ちるのが当たり前だけど、パスだったり足元の技術だったり、体力をカバーするための技術の向上をみんな日々やっている」ことに気づいたそうです。そして、それを続けられる選手が長い現役生活を送っている。技術の向上を日頃から努力し続けることで、一日でも多くプレーができることを先輩選手から見て学び、それを実践しているという内容でした。

その記事に感化され

そんな記事に感化され、自分は「今野選手を応援しよう!」と思いました。当時、日本代表にも復帰して、このままワールドカップでも勇姿が見られる! と思ったのですが、直前で彼は大きな怪我をしてしまいます。凄く残念な出来事だったのですが、それ以降も、彼が話していた「日々の技術力の向上」については自分の心に刺さったままでした。

同じ頃、デザイン業界で「観察」「スケッチ」という言葉が飛び交っていました。完成されたデザインやプロダクトを観察し、スケッチに落とし込んで、何がどうしてコレができてるのか、までを分析して、考察・コメントをスケッチに加えていく。そんな「観察スケッチ」をソーシャルネット上であげていくデザイナーが少なからずでてきました。

分析や考察が素晴らしく、絵もうまく、それぞれの要素をレイアウトする配置も素晴らしい。素晴らしいを二回使っているくらいに「デザイナーなのに美術が1」な自分のコンプレックスはザワザワして、人と自分を比べてしまう「劣等感」というやつが、心の中で起動しはじめていました。

デザインについて日々なにかの向上が出来れば、という思い。その頃からスケッチをしてみるようになりました。

最初のスケッチ

今思えば、最初に描くには腕時計ってハードル高すぎです。何度もやり直した記憶が。

 

これがまた見るも無惨な仕上がりです。描き終えるのに確か45分くらいかかりました。目の前にある絵は嘘をつきません。自分の実力のなさ、絵心の無さ、ガッカリしてました。

ただ「誰にでも最初はある」とか「絵は結局描き続けてる人が上手くなる」といった、ネットで調べて心に引っかかっている言葉を信じて、できるだけ毎日やってみよう、と思い、とりあえず「三日坊主」というキーワードをまず越えようとスケッチをしてみました。

 

それから

なんだろう、幽霊でも観て模写してる感じですが『posemaniacs』というポーズ集のサイトを観ながらのスケッチたちです。

 

三日後もやっぱり絵は上手くなってなくて、5日、10日続けても上手くなった気がしませんでした。「上手くなるには1万時間」という言葉をtwitterで見かけました。絵かデザインの話しだった気がします。その言葉に対し「時間だと無駄な浪費時間も勘定してしまうから、枚数で勘定するべきだ!」と確か横尾忠則さんが反応してました。2000枚! とか10000枚とかでしょうか。トホホ、と途方に暮れちゃいます。

唐津へ旅行へ行ったときに買った片口。中に入ってるのは現地で仕入れた純米吟醸無濾過生の地酒、と言いたいところですがただの水です。

 

あまりに大きい言葉を見てしまうと挫折してしまうので、ひとまず毎日の目の前の一枚に手を付けてみようと思いました。30日くらい経ったある日、ふと、今までどれくらい描いたっけ? とスケッチブックを見ながら枚数を勘定してみました。

消毒用に買ったスピリタス。勿論飲んだりしません。毎日描くので、家のなかにあるものは片っ端から描いていきました。「何を描くか」がネタ切れになってくるのが悩みのタネ。

 

ティファールの柄の部分。これだけ持ってみるとスターウォーズのライトセイバーな雰囲気があります。長年使ってるので、カチっとするところが戻らなくなったりしてます。そこまで表現できてるかどうかわかりませんが。。。

 

一輪挿しを逆さまに。ホント描くものが尽きて「逆さまシリーズ」もやりました。

 

すると、最初の頃より、ちょっと上手くなってるかも? と思いました。人前に見せて褒められる絵ではないのですが、最初の自分より、絵が上手くなってる気がしました。

posemaniacsを観たポーズたち。幽霊っぽくなくなってきました。進撃の巨人を思い出します。描くネタを探すうちに気になるロゴマークも描くように。

あれから

2年半近く経ちましたが、ほぼ日スケッチ、一応続けられてます。年に4日くらい、どうしても時間がとれない日があって出来ない日があるくらいです。変わった事は、最初の頃より二年半の毎日分、絵が上手くなりました。あと描くのが早くもなりました。もちろん誰かより、とか、人前に見せて褒められるかどうか、は別の話しです。

 

最近キュウリを描く機会に恵まれてます。「モノを複数にすれば?」というカミサンのアドバイスで描くネタが広がりました。

続けられた理由として、描き始めてから3ヶ月くらい経った頃に、どうしても時間がとれずに描けない日がありました。「次の日に二枚描けばいいか」とその日は諦めました。翌日、いざスケッチを始めてみると、絵の描き方を忘れてしまったかのように鉛筆が重く、進まず描きづらいことを実感しました。「一日でも休むと元に戻すまで時間がかかる」と、どこかで聞いた言葉が頭に浮かびます。それから「休むと絵が下手になる」「元に戻るまで数日以上かかる」という、強迫観念が脳内にインプットされました。以来、出張先にもスケッチブックを持ち歩くようになり、時間が無くても、必ず何かを描くようになりました。

ロゴもイロイロ。基本外国のロゴが好きですが、服部一成さんの作るロゴに結構反応してよく描いてます。描いてるうちに見るだけでは気づかなかった発見をしたりするロゴがあります。

「脅迫観念」が仲間に加わった!

右上のFedEXのロゴ。描いてるうちに「E」と「x」のなかに矢印があること見つけて「おおおおお!」ってなりました。興奮しながら、その場にいた家族全員に教えました。

 

毎日描いてるとスケッチブックもすぐ無くなっていきます。黒×黄の表紙でおなじみのマルマンのスケッチブックはどこでも買えて便利です。宜野湾の画材屋「グリーンノート」に売ってる大きめのスケッチブックが安くてページ数も多くてグーです。

 

「脅迫観念がモチベーション」とかでなく、もっと楽しい感じで続けられると良いのですが。「やらないとヤバい」「最初のヘタな自分に戻ってしまう」といった、切迫した思いの方が、自分には合ってるのかもしれません。「好きこそものの上手なれ」と言いますが、最初より上手くなったとはいえ、絵を描く事が好きかどうか、、、答えはだせません。そして、スケッチをすることの最大の目的「デザインの向上」については、仕事で証明できると思いますので、お気軽にご相談ください


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