そして今日も夕日を眺める | monoblog

沖縄そばイメージ

映画『IT/THE END』を見た。個人的にこの物語には思い入れがある。高校時代にスティーブンキングの小説にハマってた頃、いろいろ読んでいるウチに『IT』の翻訳が出た。ハードカバーの上下巻、それぞれ厚さが5センチくらいで中をあけると本縦組みの二段組でビッシリと本文が印刷されている。

息子の今年のハロウィン衣装はITのジョージィでした。

「こんなの読めるかな?」と思いつつ手に取った。半年以上かけて、通学時に電車にゆられ読んでいた。自分が読んだ、初めての長編小説だった。

映画ITの2は、前作から27年後のストーリー。小説の下巻にあたる。思い返してみると自分が小説を読んでいた高校時代は、だいたい27年くらい前だった。映画を観ながら、小説を読んでいた東西線や日比谷線の車内、千代田線のホームが浮かんできた。高校を卒業して日比谷線も千代田線も使わなくなった半年後くらいに、通学時に乗っていた時間帯、よく使っていた駅で地下鉄サリン事件が起きたこと、映画とは別次元のショックと恐怖まで思い出した。ちなみに、映画版については『IT』の1が好きです。

息子から教わったバンド

息子は音楽にハマっている。そしてそれをよく聞かせてくれる。最近、彼が聴いてるお気に入りを何度も何度も。私たちに「どれが好き?」と聞きながら。

息子が聴いてるのは「米津玄師」や「Official髭男dism」、といった最近の人たちで、自分としては、うんうん、いいんじゃない?とどれも相槌を打ってるんだけど「どれが好き?」かの答えにはなっていない。だから念押しされる。で、一曲だけなぜか耳に引っかかる曲があって、何度か聞いてるうちにサビのフレーズを覚えて、これが好きかな? と返した曲は「フジファブリック」というバンドの『若者のすべて』という曲だった。

知らないバンドだな。

フジファブリック、最近のバンドはやっぱりよく知らないな。と言ったら、カミさんは知っていた。最近のバンドではないという(歌も10年以上前のリリース)。何で今? なんか流行ってるの? と聴くと、ヴォーカルの人はすでに亡くなってるらしい。調べてみると2000年から活動してる。20年も活動してるのに全く知らなかった。ヴォーカルの志村正彦くんは2009年に亡くなってた。ディスコグラフィを見ると、一曲だけ聞いたことのある曲(山田孝之のカンヌ映画祭の主題歌)があったけど、息子から聴かされた曲とは声も曲の印象も全く違ったので結びつかなかった。

今年が死後10年目(2019年現在)で、帰京した時にテレビで息子たちは見たらしい。それにしても何故? という好奇心から、今まで全く知らなかったフジファブリックと志村くんについて、ウィキペディアや、思い入れのある人が書くテキストなど、いろいろと調べていた。

ポリープの手術して

スランプの時期があって音楽を辞めたいと思っていた。主食はフリスクともいわれていて、亡くなる直前は凄く痩せていて、前日の飲み会には参加していた。死因については病名不詳で、知人たちの証言では、自殺ではないと断言している。

奥田民生が好きで音楽を始めて、彼が薦めるミュージシャンの音源をたくさん聞いて、奥田民生との共演もしていている。亡くなったのは12月24日で、翌週に開催予定の「カウントダウンジャパン」という音楽フェスの出演が決まっていた。そのラインナップには、奥田民生の名前もあった。

バンドは出演をキャンセル。そして奥田民生はライブのときに、彼らの曲『茜色の夕日』を急に弾き語りはじめ、途中で号泣して歌えなくなった、という。茜色の夕日は、フジファブリックにとっては特別な曲で、志村くんが18歳で東京に上京して作った、最初の曲のらしい。

こんな事があったことを全く知らなかった。ひょっとしたら「とあるバンドのヴォーカルがクリスマスイブに亡くなった」くらいは知ってたのかもしれない。すっかり忘れているのか、記憶にあまりない。ここまで調べると茜色の夕日、聴いてみたくなる。

検索してみると、、、あった。

見つけた。茜色の夕日。奥田民生がカウントダウンジャパンで弾き語りしたライブ。そのとき来場した人が音源をアップしていた。

久しぶりに泣いた

ここまで調べて音源見つけて聴いたら、そりゃ46歳のオジさんだって泣く。この曲自体、奥田民生を意識して作ってる曲らしい。もう一つの奥田民生バージョンは、フジファブリックをバックに歌っている。

こっちはまるで持ち歌のように歌い上げている。最後にフジファブリックのライブバージョン。

MCの感じから志村くん、真面目な人な印象。ファンからは「しゃべらなければイケメンなのに」と愛をもって書かれてた。演奏、歌についてはとても苦しそうな印象もある。このライブの翌年、彼は亡くなった。どのバージョンも46歳には滲みた。痺れた。息子のおかげで、フジファブリックの「にわかファン」になった。

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自分の好きな映画「マグノリア」のなかで

自分の過去からどんなに逃げようとしても過去は追いかけてくる」という台詞がある。『IT』を観てたら過去に追いつかれた。息子をきっかけに、自分の過去とはリンクしていないフジファブリックを追いかけて。オンタイムでは知らなかった出来事を掘り起こした後の、喪失感。そして今日も、茜色の夕日を口ずさんでいます。


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