日々是接客 | monoblog

monoboxはデザイン事務所なんですが、それ以外にギャラリー運営をしています。2014年の10月に沖縄県うるま市にオープンした「Galleryはらいそ」は、沖縄県うるま市で制作活動をしている工芸作家の作品を展示販売しています。

今年(2019年)の10月で開廊5周年。「5年」と聞くと長かったようで、そんなに経ったんだ、とも感じます。今年の1月で4歳三ヶ月、数えてみれば36ヶ月。営業は週5日で水曜と日曜が定休日。オープンした月は10日の営業として、残りの35ヶ月は20日程度、お店をオープンしました。。スタッフが2名いるため、臨時休業はあまりなく、年末年始や催事の搬出入など、年間7日程度だと思います。なので、今まで30日くらいは臨時に休んでるかもしれません。とすると、35(営業月)×20(営業日)+10(オープン初月の営業日)-30(今までの臨時休業日)=680。今までに680日程度の営業をしていることになります。

この間に来客された方をカウントが、、、実は行ってません。オープンしてからすぐには人が来ない日が続きましたが、少しずつ認知され、メディアに取り上げられるうちにポツポツと人が来るようになり、一日に1人だったお客様が数組に増え、人が来ない日が少なくなっていきました。

デザイン事務所だけど、、、接客してます

当たり前の話しなんですが、お客様が来るということで「接客」という業務が発生します。しかし、monoboxはデザイン事務所。つまり、販売・接客という業務は「当たり前の業務」ではありませんでした。一応、デザイン事務所も部類は「サービス業」になるため、接客というジャンルについて考えてみると、クライアントとの「打合せ」などが当てはまるでしょうか。ただ、販売における接客とは、かなり違う感じがします。それ以外では、過去にアルバイトなどで接客を経験したことはあるのですが、それは「飲食業」や「コンビニ」など。工芸ギャラリーの接客とはその内容が違いました。

飲食店に来るお客様は「食事」や「喫茶」という、飲食をする目的ありきで来店します。なので、必ず何かを注文したり買っていきます。しかし、Galleryはらいそは「工芸ギャラリー」。来訪した方が必ず商品を買うとは限りません。

「買うお客様」と「買わないお客様」

飲食店と工芸販売店の大きな違いは「買うお客様」と「買わないお客様」がいること。ならば「買わないお客に対しては接客しなくて良いのでは?」と思う方がいるかもしれません。ただ、お客様が買うかどうかは「帰る」ときまでわかりません。お店に展示された商品を持ってカウンターに来られる方は「買うお客様」。何も持たずに出口に向かう方が「買わないお客様」。この違いは明確です。ただ、買うお客様も買わないお客様も「購入するか否か」までの動きはあまり変わりません。店内を回って商品を見たり、手に取ってみたり。連れ立った人と話したり、どちらが良いかと相談したり、といった行為はどのお客様も一緒なんです。つまり「買う買わないに関係なく接客は発生する」ということを、オープンしてから気づきました。

買うお客様が纏うもの

買うお客様と買わないお客様の違いについては、細かく観察していくうちに、少し違いを見出すことができます。お客様の中には、真剣なまなざして商品を見て回る方がいます。そんな方からは「本気で買う気のオーラ」を纏っているようにも見えます。こちらも真剣勝負を邪魔しないよう、お客様の気が散らないように心がけたりします。店内も何度も往復する方。それも、ぐるぐるするのではなく、いくつかのポイントを何度も行き来して、特定の商品の品定めをするお客様。気に入った商品に対して詳細に質問されてくる方、色やカタチの違いを聞いて来る方。「○○さんの商品はどこにあります?」と来店してすぐに聞かれる方。こういった買う気が旺盛なお客様に対しては、商品や作家に対する情報を積極的にお伝えして、購入するジャッジメントの手助けが出来ればと考え行動します。そこでもちろん、悩みに悩んで買わない方もいらっしゃいます。そういった方の多くは、また来店されたり、リピーターで既に購入された方だったりします。

買わないお客様はダメなお客さま?

そして「買わないお客様」について。店内を見て何が置いてあるか、どんなジャンルの商品があるかをサラっと見渡して帰る方がいます。時間をかけて見る方もいれば、さーっと一周して帰る方など、さまざまです。観光で工芸品・クラフトを探し求めて来る方は、自分だけの「出会いのモノ」を探していますが、はらいそで出会いが無い場合もあります。いろんな工芸・クラフトのお店を回ってみられる方。特定の作家のファンで、定期的に新作商品をチェックしに来る方。隣接するcafeの店主から聞いて、興味を持って来られる方。買わないお客様もいろいろな見方をしていきます。ただ、買わずに帰るお客様を邪険に扱うわけにはいきません。そのなかに「また来るお客様」がいるからです。

先ほども出しましたが「リピーター」のお客様は定期的に来店されて、商品を購入したり、見るだけて帰られたり、自分なりの買い物を楽しまれています。それと、近い将来に誰か(もしくは自分)に贈り物をプレゼントする(される)方がいます。いろいろなお店をチェックしています。その中の一つに「はらいそ」が選ばれている場合があります。贈る方のことを考えつつ、商品を見ながら「この商品を買うか、この店で買うべきか」といったことなどを、考えながら(推測です)見られている方。サッと見つつも「この店の品揃えの善し悪し」を判断されている方もいると思います。

その後、再訪してプレゼントを購入される方や、やっぱり見たモノが欲しくて買いに来た方を「また来るお客様」や、商品チェックの見方などから買わなくても「あのお客様は戻って来る」などとスタッフで確認したりしています。なので、買わないお客様、購入前のリサーチを目的とした方に対しても気を抜くわけにはいきません。

まぁ、いろいろ書いてはみましたが、気を抜くにも帰られるまではどちらのお客様なのかは判断つかないので「気の抜きようがない」のが本音です。

接客時の暗黙のルール

数年の接客経験を経て、Gallery内でお客様に対する、暗黙のルールができました(書いてしまう時点で暗黙ではなくなりましたが)。それは「購入前のお客様との雑談は控える」こと。沖縄旅行に来た方は「沖縄を存分に楽しみたい」と考えている方が多いです。そこで、自分たちの行き先、行ってみたい場所、食べたいもの、夢一杯な方々です。もちろん、工芸品も買いたい、自分にとって思い出の一品に出会いたい、と思い来訪する方がたくさんいます。来店されると「わぁー」と声をあげてキュンキュンしながらお店を回る方々。

そんなお客様に対して、購入する前に工芸品や作家、ギャラリーのこと以外については、こちらからはあまり話すことを控えます。例えば、購入前で迷っているお客様に「どこから来たか」「沖縄のどこへ行く(行った)か」「何を食べた(い?)か」「どこへ行く」「どこに泊まっている?」「オススメの店」といった、別の話しをすると、そこで「ゆんたく(沖縄の言葉で『おしゃべり』)」が始まります。かなりの確率で話しは盛り上がります。行った先の事や、こんなスケジュールを考えている、今晩の食べる場所のアドバイスは?、などなど話題もつきません。色々はなしに花が咲いたあと、お客様は旅先で入ったお店のスタッフとのコミュニケーションに、いつしか満足されてきます。満足度はあがるのですが、そこでの「購入するしない」という目的も忘れて、お店にも満足してしまいます。すると「じゃあ、ありがとう!」と言って帰る方が何組もいらっしゃいました。折角、地域の工芸作家の作品を見たり買ったりする目的で入ったのに、それを堪能せず帰してしまうのは、ギャラリーとしても本意ではありません。なので「ゆんたく」は買い物を楽しまれた後、商品をお包みし始めたあたりで、こちらから「観光でいらっしゃってます?」や「今日はどちらからお越しですか?」「どちらでこのお店をお知りになりました?」といった言葉を投げかけるようにしています。お店にも沖縄にも満足されて帰っていただければ一番の幸いだと思っています。

ゆんたく≒リサーチ

そして、購入後のお客様の「ゆんたく」は、はらいそにとっては「接客」ですが、私たちのもう一つの生業である「デザイン」や「編集」「取材」といった仕事においては、沖縄旅行者や工芸の買い物客に対するリサーチの場となっています。どこから来て、どこへ行って、何が欲しくて、、、、ゆんたくの最中に聞ける生の声。媒体を制作する者として、ユーザーの声としてデータ化されたものを目の当たりにすることはあるのですが、実際に「○○を見て来た」など媒体名が聞けたり、旅行者のメンバー構成(家族、女子旅、三世代、カップル、それぞれの見た感じの年齢など)、行ってまわった場所、旅の目的、旅先で何に困っていること、何を購入されたか、といったユーザーの詳細な情報や意見がゆんたくを通して、私たちのなかに情報としてストックされていきます。日常的にそれが聞けるのは、ある意味、貴重な場なのかもしれません。

ただ、ゆんたくも、あくまでお客様第一。そして接客における声かけはお客様によってさまざま。声をかけて欲しい人、声かけられるの嫌な人の判断、非常に難しいです。これは何年かかっても答えが見えません。それでも、来た方はGalleryはらいそ選んでお越しいただいてる方です。なので「その方に何ができるか」を考えながら、日々、新しい出会いと接客について向かい合っています。Gallryの運営についても話題が尽きないジャンルなので、また書いていければと思います。


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