「超やれやれ」を、どう読むか | monoblog

沖縄の北部・やんばるの友人・Kちゃんが、自分に起こった不慮の怪我についてFACEBOOKに書いていました。その怪我は入院するほどの重傷でした。だけど、彼女には楽しみにしていた旅行が間近に迫っていたのです。

それは絶対にハズせない

というKちゃん。それに対する家族の反応は心配そのもの。特にKちゃんの旦那さん・Jちゃんは「『超やれやれ』といった感じ」とKちゃん。「やれやれ」ではなく「超やれやれ」だ。

「やれやれ」といえば村上春樹。

一般的に現在の日本で「やれやれ」といえば、彼の右に出るものはいません。村上春樹と「やれやれ」は、切っても切れない関係で、執筆したどの小説(短編をのぞく)にも必ずでてくるのではないでしょうか。それはサンドウィッチマンの漫才における「ちょっと何言ってるかわかりませんね」みたいなもんです。そしてKちゃんに「超やれやれ状態」と例えられた旦那のJちゃん。確かに「やれやれ」が良く似合いそうだ。いっそ仮名もJちゃんでなくて「綿谷ノボル」とかにしても良いくらい「やれやれ」がマッチしている。しかし今回の「やれやれ」は頭に「超」がついている。

「超」といえば鳥山明。

鳥山明といえば最近、フランス政府から芸術文化勲章を授与された、マンガ界における屈指のヒットメーカー。その画力はハンパなく「他人を褒めない」ことで有名な手塚治虫から「ちょっと絵が上手すぎる」と言わしめたひと。「名古屋にある自宅から空港まで国道が直結している(市町村納税額がハンパなく他に引っ越してもらいたくないためとの噂)」などなど、いろんな都市伝説がある、あの漫画家です。言うまでもありませんが、代表作は『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』。

そんな鳥山先生、週刊漫画の連載はかなり「考えなし」に描いてたらしいです。考えなしの積み重ねで、大ヒットマンガを二つも描いてしまうのは想像を絶する才能といえます。

例えば、ドラゴンボールの中でスーパーサイヤ人という人種が出てくるのですが、スーパーサイヤ人の髪が金髪なのは「髪を黒く塗るのが面倒だから金髪にした」らしいです。場当たり的な考えで制作が進んでいたドラゴンボール。色んな問題が連載中に勃発したようです。

名前が長い

その問題の1つが、先ほど登場した「スーパーサイヤ人」。この名前が頻繁にセリフにでてくるのですが「名前が長くてフキダシに入らない」という問題が発生。フキダシのスペースに入る限られた文字数でスーパーサイヤ人(8文字)を消費してしまうのがかなりロス、な問題に直面したそうです。

そこで

鳥山先生、思いついたのが『「スーパー」を「超」と略す』というアイデア。超サイヤ人。この三文字の省略で台詞表現の問題がかなり解消できたようです。

「超=スーパー」の功罪

超に「スーパー」というルビ(フリガナ)をつける。これはマンガの世界で1つの衝撃をあたえたようす。ここからさらに進化して、漢字に英語のルビを振るマンガが増えたようです。必殺技に「絶対時間」と書いて「エンペラータイム」と読ませるなどなど。締切に追われる鳥山先生の「咄嗟の思いつき」が、マンガのセリフにおける進化を遂げた1ページとなったようです。

その反面、日本文化で海外に輸出されるほどの人気のマンガですが、この表現が英訳の際に新たな問題を生み出しました。

外国人には意味不明。

英訳する際に日本語の漢字とルビの意味がリンクしてないことも少なくなく、これらは「ディープフリガナ」などと呼ばれ翻訳家泣かせとなっている、らしいです

以上を踏まえると

「超やれやれ」現代日本においての読み方は「ちょう、やれやれ」ではなく「スーパーやれやれ」と、読むのではないでしょうか。それは村上春樹と鳥山明の融合、つまりフュージョンしたようなもんで、そんな言葉を発したKちゃん、やはりすごいな、と。読んでいて感動しました。Jちゃんの「やれやれ」もスーパー化したので、ひょっとしたら彼はそのうち金髪になるのかもしれません。

そして、そんな「スーパーやれやれ」と思われてるKちゃんが、先日退院できたことに対しては、素直に「おめでとう」という言葉を贈りたいです。日々のデザイン業務の合間を見つけてやんばるへ行った際には、彼等のお店でくつろぎたいと思うこの頃。


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