息子のために、願わくば | monoblog

朝の7時、息子が泣きながら帰ってきた。なんだ、どうした? とザワつく家族。口から出た言葉は「盗まれた」。

さかのぼること30分。朝ごはんに弁当の準備、洗濯物や学校の支度に家族総出でバタバタしてる最中。週末に控えた英検の受験票に、顔写真を貼るためのノリが無い。それくらい「ご飯粒でも良くね?」とは思ったが、スケボーでコンビニに買いにいく息子。そして30分後、ドアの前に泣きっ面の息子が立っていた。盗まれたのはスケボーだった。

入口に立てかけて、ノリを買って出たらもう無かった。そんな事あるのか? 自分も気が動転してきた。「違う場所に置いてないのか」「なぜ、店内に持っていかなかったのか」などと、問いただしてみても泣くばかり。今は子ども責めることじゃないよな、、、と冷静になり、朝食を食べさせてから一緒にコンビニへ。

スタッフの方に「実は先ほど息子が買い物をしたときに、、、」と事の次第を伝える。置いた場所は防犯カメラのすぐ下で、映ってるかどうか微妙な位置。「店長が来ないと防犯カメラの映像は見られない」らしく、名前と連絡先、そして入店したおおまかな時間を伝えて帰る。

翌日、店長がいる時間にコンビニへ。「昨日、盗難にあった件」を伝えると、「あ、映ってました」とのこと。なにいいぃぃっ!!! となるも冷静に。「入口横にあったスケボーを取って軽トラの荷台に置いてました」。軽トラなんだ、、、子どもじゃないんだ、、大人なんだ、、、と気持ちがザワザワ(これが『ワジワジー』ってやつなのか?)。店長の見た感じでは「なんか、凄く自然に持ってく感じでした」とのこと。聞けば聞くほど、心のザワワ、止りません。「顔とか車種はハッキリわかるんですが、ナンバーが写ってない」とのこと。そうなんだ。で、これからどうしたらいいの? と訪ねると「防犯カメラの閲覧は警察の許可申請が必要」。まずは警察に被害届を出すことが「次のターン」と教えてもらう。

すぐに管轄の警察へ連絡。「今から30分後に行ける」と、話しが早いから現場で待機。曇り空だった空から、急に土砂降りの雨。電話が鳴って出ると警察から。「雨が酷くて事故が発生したので、もう30分遅くなります」とのことだった。むむむ、この雨は事故おこりそうだし、事故処理が先だよな、むうぅーっ、と車内で待つ。およそ1時間後、パトカーが到着。

制服の上から、真っ白いレインコートを纏った二人の警察官が降りてきた。手をあげて合流し、事情を話していく。説明後に、細かい質問をいくつか受ける。ひとしきり話した後、今度は店内で店長と警察官が話し合う。割と細かい話しを聞いてるようだが、こちらに内容は聞こえてこない。待っていると、上役の警察官が「息子さんは5年生ですよね。では、学校が終わってから、もう一度来てもらえますか。彼からも話しを聞きましょう。そして被害届も息子さんから取りましょう。それまでに申請を出して、コンビニのカメラは確認しておきます」。おおお、今日は予想外の急展開。予定に入ってたwebマガジンの原稿アップ、クルマの6ヶ月点検、クライアントにデザインご提案など、粛々とすすめてく。息子の現場検証に付き添うめに。

仕事を終えて子供たちと合流。「なんかH(息子の名前)のはなし、警察が聞きたいんだって」と伝える。「えっ」とたじろぐ息子。身体から、緊張オーラを放っている。逆に妹はワクワクオーラ。「自分も着いていく」と言って聞かない。まぁ、そうだよね。ということで、3人でコンビニへ。

土砂降りの雨もあがった夕暮れ、待ち時間の少し前にコンビニに着いたけどパトカーは止まってなかった。そのうち、少し離れた通り沿いに止まっていたパトカーが、コンビニに向かって来た。さっきと同じ二人の警察官。「カメラは確認しました」「だいたい○歳くらいの方でした」と年齢を聞いて、また驚く。もっと若い子だと思ってたのに。。。息子に「なんか、こんな感じの人いなかった?」と若い方の警察官が聞くと「あ、いました。思い出した」。心当たりがありそうだ。若い警察官と息子が、二人で話しはじめる。

その間、上役の警察官と話しをする。「確かにコンビニの防犯カメラとモニタでは、ナンバーが確認できなかった」けど「動画のデータを持ちかえって署のモニタで解析すれば見えるかもしれない」とのこと。「データ」とか持ちかえって「解析」とかするんだ。「あと、もう一台のカメラにも映ってるだろうからそっちも確認する」と。え、どこにあるの、そんなカメラ。

ほら、あそこ。と上役警察官が指す方向は通り沿い。信号機の横に立ってるポールに四角い箱が取り付けられている。あれか!? あれカメラなのか。マジかー、角度的にはこれバッチリ写ってそうな位置。「むこうは市役所の管轄だから、別の申請が必要」らしく、週をまたいでしまう様子だった。正直、心の中で『マジか、あんなん言われなきゃ、絶対気づかねーし。むかし家の近くの掲示板に貼ってあった鋭い眼光のイラストとともに『見てる町』って書かれたポスターの未来型じゃねーか、リアル監視社会到来、近未来だ、SFだ!! これじゃ、うっかり万引きも出来ないじゃん(しないけど)』などと思いつつも、決して口には出さないでおいた。

若い警察官と被害届けを作る息子。判子は持ってなかったので、黒い朱肉に人差し指で書類に押す。『これ、交通違反の時にやるやつだけど、被害者でも一緒なんだな。。。』と新しい知識を得ることができた。被害内容を読み合わせると、「6時49分入店」「6時50分退店」と息子の入出時間が詳細に記されてる。分単位わかっちゃうんだ、そして1分以内の犯行かよ!? 

若い警察官が書類をのチェックをしてるとき「そのおじさんのこと、覚えてる」と息子が口を開いた。「お店出たらその人と目があって、ニヤって笑ってた」。「で、スケボーを立てかけた場所に振り返ったら何も無くて」「そしたらトラックが切り返してブーンって行っちゃったんだよね」と。「思い返すと、その人、ずっとオレのこと見てたきがする」。記憶をたどって、ぽつぽつと話す息子。そんな事があって、きっと帰り道、ショックだったし、悔しかったし、怖かったろうな。しかも、帰って父親に責められて、、、ゴメン息子、そんな事と知らず、父ちゃん悪かったよ。この件はキチンと対応してあげようと思った。

店の前で二人の警察官と家族がイロイロと話し合っている様子は仕事帰りの車を走らせる人や、コンビニに来たお客からの注目を浴び続けていた。息子は初めての事情聴取はとても緊張したみたいだった。終わってから、コンビニで子供たちに好きなお菓子を選ばせて買ってあげた。みんなお疲れさま。息子は「あー緊張したー」と言いながら、一人走って帰っていった。夕方の晴れた青空と、息子が少し大人の階段を登った瞬間に立ち会えてよかったなと思った。願わくば、スケボーが早く息子の元に戻ってきますように。

Please follow and like us:
Pin Share

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RSS
Follow by Email